鍼治療の効果が出るのはいつから?効果を感じるためのコツや通院スケジュールも解説
2022.07.13
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東洋医学とは、私たちに備わっている治ろうとする力(=自然治癒力)を高め、不調や病気を治療する伝統医学です。
人生100年時代とも言われる昨今、その考えに共感する人が増え注目を集めています。SNSやメディアで東洋医学を知り、興味を持った方も少なくないのではないでしょうか?
そこで本記事では、東洋医学ビギナーに向けて東洋医学の基本的な概念である気・血・水や陰陽論などを優しく解説します。東洋医学の奥深い世界を知るきっかけになれば幸いです。
このコラムの目次
東洋医学とは、私たちのからだに備わっている治ろうとする力(=自然治癒力)を高めて、不調や病気を治療する伝統医学です。
2000年以上前に中国大陸で生まれ日本に渡り独自に発展してきた歴史があり、今日でもさまざまな分野で取り入れられています。治療法には、鍼灸(しんきゅう)治療をはじめ按摩(あんま)、漢方薬、薬膳などがあります。
大きな違いとして挙げられるのは、患者が抱える病気への対応です。
西洋医学は病原を中心に診ますが、東洋医学は全身のバランスを診て治療を行います。
西洋医学 | 東洋医学 | |
診るところ | 病原が中心 | 全身のバランス |
得意な分野 | 感染症や手術が必要な病気 | 不定愁訴(=気のせいと思われる症状)や予防医学 |
メリット | すぐに効果を感じやすい | 副作用の心配がない |
デメリット | 副作用の心配がある | 改善までに個人差がある |
西洋医学は薬や注射・手術といった手法で、からだの悪い部位や原因となるウイルス等を直接排除するアプローチを行います。
一方、東洋医学は心とからだ全体のバランスを整え、自然治癒力の働きを補助し、不調やその根本原因をからだの内側からアプローチしていきます。
どちらのアプローチにもメリット・デメリットはそれぞれあるため、どちらが良い・悪いではなく、その人の症状に合わせて両者を上手く使い分けていくことが望ましいでしょう。
2000年以上の歴史を持ち、長い経験が蓄積された「伝統医学」と聞くと、複雑そうな印象を持つ方も少なくないでしょう。
しかし実は、東洋医学は誰もが経験したことがある身の回りの出来事や、自然界の変化・現象の仕組みをもとに人体に置き換えた考え方とされています。一度理解してしまえば、決して難しいものではありません。
本章では、そんな東洋医学の基本的な概念を3つご紹介します。
まずは、私たちのからだを巡っている生命エネルギ―「気(き)・血(けつ)・水(すい)」について説明します。
東洋医学の観点では、人体の働きはこの3つの物質によって構成されていて、これらが体内を循環することによって生命活動を維持していると考えられています。
「気・血・水」は常にからだを循環しているので、そのバランスが崩れて循環が滞ったり、不足したりすると、内臓がうまく機能せず不調や病気を引き起こします。
また、3つそれぞれがバランスを取り合っているので、1つが変調を起こすと他の2つにも影響を及ぼすことが多いです。
次に紹介する「陰陽論(いんようろん)」とは、自然界のあらゆるものは「陰」「陽」という対立する2つの性質で成り立っているという考え方です。
身近なものを陰陽に分類すると次のようになります。
陽 | 陰 |
昼 | 夜 |
太陽 | 月 |
男性 | 女性 |
動 | 静 |
熱い | 寒い |
外 | 内 |
背中 | 腹 |
なんとなくイメージしやすいのではないでしょうか?
ただし、陰陽は常に一定ではありません。例えば、陽である男性も活動的なとき(陽)もあれば休むとき(陰)もあり、陰の女性もまた同じです。これらを「陽中の陰」「陰中の陽」と言います。それを表したのが太極図です。
▼太極図
また、昼から夜に移り変わるように、陰陽は一定のリズムで変化し、どちらかが増えすぎることなくバランスを保ちながら安定していると考えられています。
「太陽と月」がバランスを保つように、例えばからだの「内と外」、「背中と腹」も互いにバランスが重要であるといった具合になります。
3つ目に紹介する「五行論(ごぎょうろん)」とは、この世のあらゆるものを「木・火・土・金・水」という5つのどれかにあてはめることができるという考え方です。
また、5つの要素は相生(そうせい)、相克(そうこく)の関係でバランスを保つと考えられています。
これらの考え方を元に自然と人体の関係性を分類したのが「五行色体表」です。人間の五臓を中心に、関係が深い季節やからだの部位、病んだときに表れる症状などがまとめられています。例としていくつかご紹介します。
五臓 | 五腑 | 季節 | 気候 | 部位 | 感情 | |
木 | 肝 | 胆 | 春 | 風 | 目 | 怒 |
火 | 心 | 小腸 | 夏 | 暑 | 舌 | 喜 |
土 | 脾 | 胃 | 長夏 | 湿 | 口 | 思 |
金 | 肺 | 大腸 | 秋 | 乾燥 | 鼻 | 憂 |
水 | 腎 | 膀胱 | 冬 | 寒 | 耳 | 恐 |
※五臓・五腑については次章で説明します。
五行色体表は基本的に横に見ていきます。例えば、「肝」の病症が出やすい季節は「春」で、「風」は外感病(=風邪のような症状)を引き起こしやすく、「目」のかすみや充血といった症状が表れ、「怒」りやすくなるといった具合です。
このように五行論は、「気・血・水」や「陰陽論」の概念とともに東洋医学の診断や治療でよく用いられる基本的な考え方です。
食べ物や飲み物が内臓全体に行き渡るような感覚を「五臓六腑(ごぞうろっぷ)に染み渡る~!」と表現することがありますよね。実は、単純に内臓のことを示しているわけではないことはご存じでしたか?
「五臓六腑」とは、内臓名だけでなくそれぞれの役割や機能を含んだ広い意味を持つ東洋医学の言葉です。西洋医学の内臓器官の分類とは多少異なります。
五臓 | 六腑 | ||
肝 |
|
胆 |
|
心 |
|
小腸 |
|
脾 |
|
胃 |
|
肺 |
|
大腸 |
|
腎 |
|
膀胱 |
|
三焦 |
|
※三焦は機能だけあって実体はないと言われています。
五臓六腑は東洋医学において「臓腑経絡論」という人体のしくみに分類され、前章の「気・血・水」、「五行論」と深く関わっています。特に、「気・血・水」の生成や運搬は、臓腑どうしが密接な関係をもって行うため、ひとつの臓に異常が表れると、他の臓や腑に影響が出ることもあります。
五臓六腑に繋がっている「気」の通り道を経絡(けいらく)と言います。
そしてその経絡上にある気が集まるスポットを経穴(けいけつ)=ツボといい、私たちのからだに全361箇所あると言われています。
ツボは不調が表れやすいと同時に治療のポイントでもあるため、鍼灸や按摩はこのツボを刺激して気の流れを良くし不調や病気の改善を促します。
〈自分でツボを押してみよう〉
ツボ押しはいつでも手軽に押せるので、ぜひ一度試してみてください。以下の関連記事では身近なからだの悩みに役立つツボを紹介しています。
▼肩こりに悩んでいる方はこちらの記事をご覧ください。
▼デスクワークやスマホ閲覧で目が疲れている方はこちらの記事をご覧ください。
目のツボにはどんなものがある?目の不調と鍼灸の関連性について解説
ここまで東洋医学の基礎知識を説明してきましたが、「やっぱり難しかった…」という方もいらっしゃるかもしれません。
東洋医学を理解するコツは、実際に見て聞いて体験することが大切です。なので少しでも東洋医学の興味を持った方は、実際に東洋医学を受けてみましょう。
東洋医学の治療法はさまざまありますが、ツボによる治療に興味がある方は鍼灸治療がおすすめです。
鍼灸治療は文字通り、鍼(はり)とお灸(きゅう)を使い、ツボを刺激することで気のめぐりを良くし自然治癒力を高めます。
また、肩こりなど凝っている筋肉に鍼灸で刺激をすることで血行が良くなり、コリや痛みの緩和に繋がります。
鍼の種類は用途に合わせてさまざまで、皮膚に刺すものもあれば刺さない鍼もあります。興味がある方は下記の関連記事をご覧ください。
▼毫鍼…鍼治療で使われる代表的な鍼
▼美容鍼…美容目的に特化した鍼
▼スポーツ鍼…スポーツによる疲労回復やコンディション維持、怪我の予防を専門にした鍼
▼小児鍼…お子さまの治療に特化した痛みを与えない刺さない鍼
▼円皮鍼…セルフケアとしても使われる貼るタイプの鍼
円皮鍼(えんぴしん)とは?効果的な使い方や注意点をまとめて紹介
「気のせいかな」という不調から、医療現場の代替医療、美容やスポーツに関するからだの悩みまで、幅広い分野で注目されている鍼灸治療をぜひ体験してみてください。
早速お近くの鍼灸院を探してみましょう。
東洋医学とは、私たちがもともと持っている自然治癒力を高めて、不調を改善し病気を未然に防ぐことを目指したからだに優しい医学です。
本記事を読み、さらに東洋医学に興味が湧いた方は、次は実際に東洋医学を体験してみましょう。治療はさまざまありますが、ツボの効果を感じてみたい方はぜひお近くの鍼灸院へいってみて下さいね。
このコラムの監修者
馬場道啓
馬場回生堂鍼灸療院副院長
(公社)福岡県鍼灸マッサージ師会理事学術部長、(一社)福岡市鍼灸師会副会長、経絡治療学会理事
(公社)全日本鍼灸学会、経絡治療学会、日本伝統鍼灸学会
はり師、きゅう師、鍼灸教員資格
1998年日本鍼灸理療専門学校専科卒業、2002年東京医療専門学校教員養成科卒業。鍼灸治療は故馬場白光と道敬に師事し、経絡治療を学ぶ。現在は馬場回生堂鍼灸療院にて鍼灸臨床を行いながら、福岡医健・スポーツ専門学校や東洋鍼灸専門学校にて非常勤講師として、また経絡治療学会主催の夏期大学や経絡治療学会九州支部の講師として教育にも携わっている。