鍼治療の効果が出るのはいつから?効果を感じるためのコツや通院スケジュールも解説
2022.07.13
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鍼治療で使う「鍼」と聞くと、どんなものを想像しますか?
ほとんどの方が「先の尖った鋭い細長いもの」を想像すると思います。
鍼灸の世界では、その鍼を「毫鍼(ごうしん)」と呼びます。この難しい漢字の毫鍼は、中国の古い時代の鍼を元祖に、改良、進化しつづけて今の形に至っています。
実は鍼治療に使われる鍼は、毫鍼のように鍼先が尖った皮膚に刺入する鍼だけではありません。
そこで本記事では、毫鍼をはじめとした鍼の種類やお灸の違い、鍼を試す方法などをご紹介します。
このコラムの目次
鍼治療で使われている鍼にはさまざまな種類があり、大きく3つに分けられます。
ここではこの3つのタイプを代表する鍼をご紹介します。
毫鍼とは、毫毛と言われる先が細くなっている毛に似ていることから、名付けられたと言われています。
国内で使われている“刺す鍼”のもっとも代表的な鍼で、一般的に「鍼」と言えば、毫鍼をイメージする方がほとんどでしょう。
毫鍼は古い時代に生まれたものですが、患者が痛みを感じにくくスムーズな治療のために、素材や鍼先などはメーカーによって工夫が異なるのも特徴です。
▼毫鍼の詳しい特徴
素材 | ステンレス (使い捨て、リユース) |
金・銀 (高圧滅菌してリユース) |
鍼先 | 松葉型 (先端のまわりが丸く、 皮膚にやさしく刺入できる) |
柳葉型 (先端のまわりが鋭く、 皮膚にスパッと刺入できる) |
鍼柄(鍼を持つ部分) | プラスチック(使い捨て) | 金属製(使い捨て、リユース) |
鍼管の形 | 丸型 | 六角形 |
鍼管の材質 | プラスチック(使い捨て) | 金属製(リユース) |
鍼管(しんかん)と呼ばれる短く細い管に入れて、わずかに飛び出た毫鍼の頭を指先で“トッ、トッ、トッ”と優しく叩いて皮膚に刺入するのが主流です。ほかにも、鍼を2本の指で持ち、鍼管を使わずに刺入するやり方もあります。
注意したいのは、打ち方が鍼灸院によって違う可能性があるということです。というのも国内では多くの鍼灸の流派が存在し、鍼の種類、打ち方、鍼を使う本数などが違います。鍼灸院に行くときにはホームページなどで確認するのもいいかもしれません。
鍉鍼とは、 “刺さない鍼”の一つです。
先端が毫鍼のように尖らず丸まっているので、皮膚を貫きません。ツボ(経穴)や経絡などにあてて、押したり、こすったりして皮膚に刺激を与るため、タッチが非常にやさしく、心地よく感じる方が多くいらっしゃいます。
そのため、からだへの刺激がやさしいため小児鍼としても使われています。
またここ最近注目を集めているのが、鍉鍼を美容用として使う方法です。顔や頭の細かい部分を刺激できるために、ご自分で簡単にできる鍼のセルフ美容ケア用の鍼としても使われています。
鍼シールは、絆創膏のように貼り付けて使用するタイプの鍼です。
貼るだけで継続して患部に弱い刺激を与えるため、、やさしい鍼治療をご自分で体験できます。
など、どんな場面でもご自分で簡単にその場でピタッと貼り付ければOKです。
付いている鍼は、普段の鍼治療に使用している鍼と同じ金属のものや粒状のものなどがあります。鍼の長さは自分の受けたい刺激量に合わせて選べます。主に1mm前後のものが多く利用されています。
また鍼灸院では、治療後の効果を持続するために鍼シールを使うことがあります。
鍼灸で使われるさまざまなタイプの鍼のルーツは、中国になります。
中国では数千年前から鍼治療を行っていました。昔は石の先を尖らせたものを鍼として使っていたようです。そこから文明が発展し、古代中国では多くの種類の鍼が誕生しました。その中で主に使われた鍼は「古代九鍼(こだいきゅうしん)」として9種類に分けられています。
またこの9種類の鍼は、皮膚を破る鍼、皮膚に刺入する鍼、皮膚に刺入しない鍼の3つのタイプに分類されます。
古代九鍼 | 長さ | 用途 | |
皮膚を破る鍼 | 鑱鍼(ざんしん) | 1寸6分(約50㎜) | 皮膚の調和に用いる |
鋒鍼(ひしん) | 4寸(約120㎜) | 癰(腫れ物) や大膿を排出する |
|
皮膚に刺入する鍼 | 毫鍼(ごうしん) | 1寸6分(約50㎜) | 熱や痛みを取り除くために用いる |
長鍼(ちょうしん) | 7寸(約210㎜) | 深部の邪や痹を取り除くために用いる | |
円利鍼(えんりしん) | 1寸6分(約50㎜) | 急性病(急激な痹)や腫瘍に用いる | |
大鍼(だいしん) | 4寸(約120㎜) | 関節の腫脹を取り除くときに用いる | |
皮膚に 刺入しない鍼 |
鍉鍼(ていしん) | 3寸半(約150㎜) | 血脈の調和に用いる |
円鍼(えんしん) | 1寸6分(約50㎜) | 肌肉の調和に用いる |
しかし残る2つの皮膚に刺入する鍼と皮膚を刺さない鍼は、材質や刺入具合、用途に合わせて、進化し続けています。また現代人に合わせて使い勝手が良く簡単に扱える「鍼シール」も登場しています。
そもそも鍼治療は東洋医学の一種で、からだにあるツボ(経穴)を刺激することで血行を促進し、さまざまな体調改善を図るものです。
治療者は、患者さんの症状や鍼の経験、反応の強さ、治療の目的などを考えて、鍼の種類を使い分けています。これは、医者が症状に合わせて、薬や手術方法を使い分けているのと同じです。
たとえば、大きな筋肉が痛みの原因であれば、その筋肉を毫鍼でしっかりと狙う、ツボ(経穴)を優しく継続して刺激したい場合は鍼シールを用いるなど、そのときの状況に応じて鍼を使い分けています。
お灸は、もぐさを皮膚の上で燃やして、熱によりからだを刺激するものです。
もぐさは乾燥させたよもぎの葉の裏にある白い綿毛を精製したものです。よもぎには、止血、増血、婦人科疾患などにも薬効があります。
またもぐさを燃やすときに発生するにおいは、シネオールという成分が含まれ、さわやかでリラックス効果があると言われます。
灸治療では、もぐさを手で捻り、火を付ける方法やセルフケアにも使える紙の台座の上にもぐさを付けた台座灸、もぐさを棒状の紙で包んで圧縮している棒灸、炭にもぐさを混ぜて固めた炭灸など、鍼と同じで症状に合わせて使い分けます。
もちろん、鍼とお灸を組み合わせて治療すれば、相乗効果を期待できます。
カッピングは、皮膚や筋肉を吸引して刺激する治療です。
効果は、鍼やお灸と同様に、刺激部位の血流改善による筋緊張の緩和などが期待できます。
カッピングの治療では、コリや固まった筋肉の部位に吸い玉(ガラス製やプラスチック製がある)を置いて、皮膚を吸引します。吸引された部位は、吸い玉の跡が付くことが多いですが、2~3日で治ります。
鍼治療は、さまざまな鍼を用いて、自らの自然治癒力を高めることで症状を改善できる、世界中で注目されている分野です。そんな鍼治療を試してみたい人におすすめの方法をご紹介します。
鍼治療を試してたいなら、鍼灸院に行ってみましょう。
リモートワーク続きで肩こりや腰痛がひどい、今すぐ改善したい症状がある
肩こりや腰痛がひどく、湿布を貼ってやり過ごしている状態の場合、リモートワークが続く限りその痛みが積み重なり慢性化してしまうかもしれません。そんなときは、鍼治療の出番です。
肩こり、腰痛の原因は、ほとんどが固まった筋肉が原因です。その部位に鍼治療を受けると、今までピーンとはって痛み出していた筋肉がふわんと緩みます。すると、固まっていた筋肉がゆるんだだけなのに、からだ全体の重だるさが抜け、軽く感じる方が多いようです。
もし肩こり・腰痛を慢性的にお持ちなら、1~2週間に1度メンテナンスとして鍼治療を受けると、肩こり・腰痛が緩和できます。
その道の専門家に診てほしい
たくさんある鍼灸院でも、全てが同じ鍼灸治療をしている訳ではありません。鍼灸院も病院やクリニックと同じように、下記のように得意な専門分野を持っています。
ホームページやブログなどで確認して、ご自分が希望している分野を専門とした鍼灸院を選びましょう。
鍼治療を受けてみたいけれど、まだ鍼灸院に行く自信がないという方や、今は外出を控えておきたい方などにおすすめしたいのが、鍼シールです。
鍼シールは、シールに鍼が付いており、シール部分を剥がして、気になる部分にペタッと貼り付けるだけ使うことができます。シールに付いている鍼が非常に弱い刺激を与え続けてくれることで、ゆっくりと血行改善が促進されます。
ただし、貼ったままにするのは要注意です。水に塗れるとテープが浮き、剥がれやすくなります。そのため、入浴前に剥がし、入浴後に新しいものに張り替えましょう。もし鍼シールについて不安や疑問があれば、メーカーまたは鍼灸師にお問い合わせください。鍼灸院に行きたいけれど、新型コロナ感染防止のために外出は控えたいなら、まずは鍼シールから始めてみましょう。
最後に、鍼治療で使う鍼には、「刺す鍼」「刺さない鍼」「貼る鍼」があることがわかりました。
鍼灸師は、患者さまのその日のからだの状態や症状、鍼灸の経験なども考慮して、刺す鍼や刺さない鍼、鍼シールなど使い分けて、からだの不調を改善できるように治療しています。
ぜひ、鍼灸院でその魅力を体験してみてください。
このコラムの監修者
櫻庭陽
国立大学法人 筑波技術大学 保健科学部附属東西医学統合医療センター 准教授
(公社)全日本鍼灸学会、日本臨床スポーツ医学会、日本透析医学会、日本統合医療学会
はり師・きゅう師、健康運動指導士
統合医療施設で鍼灸外来を担当。研究領域は、スポーツや健康運動、血液透析医療、M-Testのほか、鍼灸あん摩マッサージ指圧師のリカレント教育にも携わる。全日本鍼灸学会スポーツ鍼灸委員会委員、学校法人滋慶学園 東京メディカル・スポーツ専門学校教育課程編成員、M-Test研究会インストラクター。