【必読】5分でわかる「鍼灸」とは?効果やメカニズムを徹底解説

鍼灸治療は、東洋医学の一分野で、病気の原因を心とからだのバランスと捉えることで本来の治癒能力を高めようとする施術法です。

鍼灸に興味はあれど、「鍼を刺すって痛そうで怖い…」と思われている方は多いですよね。

そこで本記事では、初めて鍼灸院に行く前に誰もが疑問に感じる、鍼灸の基本や効果の仕組み、鍼灸院での施術の受け方について解説します。

ぜひ最後までご覧ください。

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鍼灸治療とは

鍼灸治療は、からだ全体のバランスを整える、東洋医学・漢方医学の一分野です。

「鍼(はり)」や「灸(きゅう)」と呼ばれる道具を使って、私たちのからだに361箇所あるとされる経穴(ツボ)に、的確な刺激を与えます。

鍼(はり)治療とは

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鍼治療とは、ステンレスまたは銀製の鍼をツボに刺していく施術方法です。鍼先の太さは0.1㎜~0.3㎜ほどで、髪の毛の太さと同じくらいです。

ごう鍼・円皮鍼・皮内鍼といったタイプや、スポーツ鍼・美容鍼・小児鍼といった目的別まで、鍼の種類はさまざまです。

深層の筋肉に原因がある肩こりにはごう鍼、小児の夜尿症には鍼を刺さない小児鍼(ローラー鍼)を使用するなど、患者に合わせて使い分けます。

灸(きゅう)治療とは

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灸治療とは、もぐさを使って経穴(ツボ)に温熱刺激を与える施術方法です。もぐさはヨモギの葉から作られます。

冷えが強い方の足のツボや、逆子の治療などに使用します。

西洋医学の薬と何が違うの?

鍼灸治療は東洋医学の一つだと説明しましたが、本章ではそもそも「東洋医学」と「西洋医学」の違いについてわかりやすく説明します。

▼ポイント

西洋医学:病気の原因を細胞或いは遺伝子レベルまで掘り下げて施術する、ミクロの医学。病気の原因を除去することで施術するアプローチが主体。

東洋医学:病気の原因を全人的に捉えて施術する、マクロの医学。病気が起こる前(未病段階)で自然治癒力を高めるアプローチが主体。

西洋医学は薬や注射・手術といった手法で、からだの悪い部分に直接アプローチする医学です。悪い部分の原因を除去することですぐに改善の効果を感じやすい一方で、からだの急な変化による副作用の心配もあります。

これに対して東洋医学は、患者の心やからだ全体を診療の対象とし、不調もしくはその根本要因をからだの内側から治していく施術法です。

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悪い部分が顕在化していない段階から自然治癒力を高めて病気を予防することを、本来の目的としています。その分、短期的には目に見える効果を感じにくいですが、からだに及ぼす副作用などの影響の心配が少なく済むのが特徴です。

西洋医学 東洋医学
施術の目的 症状緩和 予防・QOL向上
施術の方針 病巣排除(薬・注射・手術など) 自己治癒力を高めるサポート
診るところ 病巣(不調の原因) 人(心とからだの全部)
主なメリット すぐに効果を感じやすい 副作用の心配がない
主なデメリット 副作用の心配がある 効果実感までに時間がかかる

処方するものは、西洋医学は症状に合わせた対処法の「薬」であり、東洋医学は人に合わせたオーダーメイドの治療穴の「ツボ」ということになります。

どちらもアプローチに違いはありますが、「健康になる」という目的は共通しているため、どちらが良い・悪いではなく、両者を上手く使い分けていくことが望ましいでしょう。

鍼灸の効果とメカニズム

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東洋医学について理解は深まっても、鍼灸治療が本当に効果があるのか気になりますよね?

そこで本章では、鍼灸治療がどんな症状に有効なのか、なぜ効くのかについて詳しく説明します。

鍼灸治療の効果が見込める疾患

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まずは、鍼灸治療で有効性がある病気・症状を紹介します。以下に、NIH(米国国立衛生研究所)が、科学的根拠に基づいた鍼灸の効果の検証を進めている病気・疾患をまとめました。

【神経系疾患】 ◎神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・ヒステリー

【運動器系疾患】 関節炎・◎リウマチ・◎頚肩腕症候群・◎頚椎捻挫後遺症・◎五十肩・腱鞘炎・◎腰痛・外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫)

【循環器系疾患】 心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れ

【呼吸器系疾患】 気管支炎・喘息・風邪および予防

【消化器系疾患】 胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)・胆嚢炎・肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾

【代謝内分秘系疾患】 バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血

【生殖、泌尿器系疾患】 膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・陰萎

【婦人科系疾患】 更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性・血の道・不妊

【耳鼻咽喉科系疾患】 中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・ちくのう・咽喉頭炎・へんとう炎

【眼科系疾患】 眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい

【小児科疾患】 小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善

参考:公益社団法人 日本鍼灸師会 (原文:National Institutes of Health Consensus Development Conference Statement

鍼灸はなぜ効くのか

私たちのからだには14本の経絡(血液や”気”の流れ)が通っており、その経絡上には全361穴のツボがあります。

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東洋医学の理論上、からだの中でも経絡の流れが悪くなることが病気の原因と考えられています。

そこで、経絡上にあるツボを鍼灸で刺激することで、血行が改善され、本来のからだエネルギーの流れや自然治癒力を取り戻し、症状をやわらげることができるという仕組みです。

▼ポイント

自己治癒力を向上させるには、血液が重要
  • 筋肉の緊張が原因の肩こり:患部の血行を促進させるツボを刺激することで、血行を促し自己治癒力を高めます。
  • 関節炎:患部に集まっている血液を流すことで、炎症を鎮めます。

ここまでのお話をまとめると、経穴(ツボ)は、からだが悪い時にその反応が現れやすい箇所で、かつ治療穴ということになります。

まだ鍼灸がよくわからない!という方へ|鍼灸を科学的に説明してみる

ここまで鍼灸の効果や仕組みについて解説してきましたが、「からだのエネルギーやツボと言われてもますますわからない。」「経験した人は効くっていうけど…本当に?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。そのお気持ちもわかります。

なぜなら、処方箋や手術などで馴染みのある西洋医学は「科学的」で理解しやすい一方で、東洋医学は「(心やからだが)良くなる」というシンプルな目的に対して多くの施術法があって複雑だからです。

近年において、東洋医学の認知度が低いという事については、一言で説明することが難しい背景にあります。

鍼灸は、人間は本来自然と共存するために生まれたという東洋医学の思想が元となっています。症状に対して方程式のようなものはありますが、患者の数だけ施術法もさまざまで、それに対する先生の考え方や得意分野が異なります。そのため実に多くの考えが存在し、鍼灸自体が「哲学的」なアプローチが主流となっているのです。

しかし現代に入り東洋医学の有効性が注目され、世界中で東洋医学を「科学的」に説明しようと研究されています。

そのような研究結果の中で、今回は鍼灸による自己治癒力向上のメカニズムを例にしてご説明します。

〈こんな経験ありませんか?〉

転んでケガをした時、血がたくさん出た。
皮膚が擦りむけて見た目から痛そう…。
でも時間がたてば傷はふさがり、見た目もちゃんと治った。

この現象から分かる通り、本来私たちのからだにおける「治す力=自己治癒力」は、血液の中に含まれています。

では具体的に「鍼をしたら楽になりました!」と言っている方の、鍼を刺したからだの現象を見てみましょう。

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①凝っているコリコリの筋肉は血液が枯渇している状態(=血行不良)



②そこに鍼を刺すことで、目には見えないくらいの”小さな傷”を筋肉に付けます。



③からだは「ケガをした」と思って、血液をたくさん送り込みます(=血行促進)
※鍼の周りがうっすら赤くなるのは、血液が集まっている良い証拠です(=フレア反応)



④ 集まった血液は、十分な酸素や栄養を筋肉に与え、修復作業が落ち着いたころには柔軟でふわふわな筋肉になるイメージです。

鍼をするとこのような反応が体内では行われ、多くの方は術後「楽になった」「からだが温まった」と感じます。

このように、鍼灸は科学的・医学的にエビデンスがしっかりあり、科学的にも説明できる医療と言えます。

参考:肩こり・腰痛に対する鍼治療

鍼灸の診療の仕方

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ここからは、どのような流れで鍼灸治療を行うのかご説明します。

STEP1:予約を取る

ホームページや予約サイトで気になる鍼灸院の情報を確認し、来院希望の店舗に、電話やメール、LINE@などで来院日を相談します。

初回は、ヒアリング(問診)などがあるので、時間に余裕を持って予約してください。

STEP2:来院・問診

悩みである症状に対してオーダーメイドの施術方針を立てるため、普段の生活環境、体質、姿勢チェックなど、じっくりとお話を伺います。

〈問診例〉

  • 症状について(いつから、どのような痛みか、どんな時に痛むかなど)
  • 日常生活について(どんな姿勢が多いか、お仕事、生活環境)
  • 既往歴、家族歴、施術中の病気はないかなど
  • 体質チェック(食欲、睡眠、お通じ、熱がり・寒がり、汗の量、ストレス度合いなど)
※問診によっては、鍼灸以外の施術を勧められる場合もあります。
例1)鍼に対して極度な恐怖感がある方には無理に刺さず、手技施術とストレッチ指導
例2)関節炎がひどいと来院したが、亀裂骨折の疑いあるため整形外科への来院を提案

STEP3:施術開始

問診や触診をもとに、経絡に沿った経穴または反応点を見つけます。

鍼は、筋肉の大きさや骨の位置を理解したうえで、適性の深さ・角度で素早く刺入します。

その後、置鍼(ちしん)と言って10分ほど鍼を刺したままにし、最後に鍼を抜きます。

お灸の場合は、ツボの皮膚にもぐさや長生灸を置き、火をつけて温熱刺激を与えます。じんわり温かい状態を数分間繰り返し行います。

施術を受けている間は、血行がよくなりからだがぽかぽかして眠くなります。それは、からだがリラックスして「修復力を上げよう」としている証拠なので、眠ってしまっても問題ありません。

もし、少しでもからだに違和感を感じたらすぐ担当の先生に伝えてください。

眠くなる理由を詳しく知りたい方は、別記事「鍼治療で眠くなるのはどうして?メカニズムと治療後の過ごし方を詳しく解説」をご覧ください。

アフターフォロー

鍼やお灸を行った後は、特別注意することはありません。普段通り、お風呂でからだを洗ってもらって大丈夫です。

稀に、運動をした後のように重だるくなることがあります。それは、”好転反応”といって「からだの修復作業を行うので、早く寝てください。」という信号なので、無理をせず早めに寝るようにしてください。

▼ポイント

鍼治療の効果が一番発揮されるのは、施術を受けたその日の”睡眠中”です!からだを休める自律神経である副交感神経が優位になることで、自己治癒力が活発になりいつもよりぐっすり眠れます。
ぜひ、次の日の寝起きのスッキリ感も体感してみてください。

鍼灸治療に関するよくあるQ&A

最後に、鍼灸に関してよくある質問についてお答えします。

Q:鍼灸施術は健康保険で受けられますか?

次の疾患については可能です。

  1. 神経痛…例えば坐骨神経痛など。
  2. リウマチ…慢性で各関節が腫れて痛む自己免疫性疾患。
  3. 腰痛症 …慢性の腰痛。
  4. 五十肩…肩の関節が痛く腕が挙がらないもの。
  5. 頚腕症候群…頚から肩、腕にかけてシビレて痛むもの。
  6. 頚椎捻挫後遺症…むち打ち症などの後遺症。

参考:公益社団法人日本鍼灸師会

ただし医師の同意(医師の同意書)がいるため注意が必要です。詳細については、前もって鍼灸院に直接ご確認ください。

 Q:鍼による痛み・腫れなどの副作用が怖いです。

鍼灸院で使われる鍼の太さは、髪の毛くらい細いので、基本的には痛みは強くありません。

適切な施術を行うために、急に鍼を刺すのではなく、必ず問診が行われます。もし痛みが強いと感じたら、担当の先生に伝えてください。

鍼が初めての方には先生側も十分なフォローをしてくれるので、遠慮なく相談してください。

 Q:どんな鍼灸院を選んだら良いですか?

目的や得意とする施術領域、通いやすさなどは人によってさまざまです。ぜひ、こだわりたいキーワードで探してみてください。

その上で、通いやすさを考えて、場所を選ぶのをおすすめします。施術内容によっては、複数回の施術が必要になるので、通いやすさを重視しましょう。

こちらの関連記事「初めての鍼灸院の選び方!失敗しない見極めポイント7つを徹底解説」も参考にしてください。

Q:鍼灸に興味はあるのですが、頻繁に外出できません。対策はありますか?

新型コロナウイルス感染防止対策や、子育て・介護中などで外出が難しい方には、鍼灸師が直接自宅にきて施術を行う往診がおすすめです。

往診の際、鍼灸師の衛生管理は十分に行っているので、安心して治療を受けることができます。心配な方は予約の際に直接確認してみると良いでしょう。

往診が可能な鍼灸院は、サイト内の「鍼灸院検索ページ」から検索できます。お近くの鍼灸院を探してみてくださいね。

まとめ|鍼灸をうまく活用して、心とからだを健康へ

鍼灸治療は近寄りがたいものではなく、あなたに寄り添う身近な医療機関です。

古き良き医療を使いこなす鍼灸師は、東洋医学をフル活用し、西洋医学の観点からもあなたの健康をサポートしてくれます。

マッサージでは改善しない。でも病院に行くほどでもない。

そんな方は、ぜひ一度相談してみてください。

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この先の健康を見直したい
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など、ご希望の条件で鍼灸院を探してみてください。

このコラムの監修者

長谷川栄一

(公社)日本鍼灸師会 

全日本鍼灸学会

はり師、きゅう師 あん摩マッサージ指圧師

(公社)日本鍼灸師会理事を15年勤め、一方で南京中医学院との医学交流に尽力。現在は、(一社)愛知県鍼灸師会会長、名古屋大学統合ヘルスケアチーム、中部大学非常勤講師、長谷川針灸院院長として活躍。

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