鍼治療の効果が出るのはいつから?効果を感じるためのコツや通院スケジュールも解説
2022.07.13
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鍼灸を受けてみたいけれど、「鍼は痛いかも?」と不安に感じる方は少なくないと思います。
しかし実際、鍼を皮膚に打ってみると、痛みは感じないという人がほとんどなのをご存じですか?
そこで本ページでは鍼がどんなもので、なぜ痛みが出ないのか
についてご紹介します。鍼灸治療が怖いけれども興味のある方は、ぜひご覧ください。
このコラムの目次
鍼灸治療では、からだに鍼(はり)を刺す方法が一般的です。鍼を刺す行為で「痛いかも」というイメージを持たれる方は少なくないですが、鍼がどんな太さのもので、どんな痛みがあるのかご存知ですか?
鍼灸で一般的に使う鍼は、髪の毛と同じくらい細く繊細に作られています。
鍼が皮膚に刺入される瞬間は、蚊に刺される程度でほぼ痛みを感じることはありません。
実際に「刺すと痛いもの」で連想される注射針の太さは約0.7~0.9mmですが、それに対して、鍼灸の鍼は約0.10~0.34㎜ほどと、注射針の3分の1くらいの太さです。
鍼の刺入時には、痛みを感じたとしても蚊に刺される程度に収まるのですが、「鍼灸で全く痛みを感じない」とは言い切れません。
そこで本章ではあえて、鍼灸で痛みを感じる場合のあるタイミングをご紹介します。
なお、いずれも注射針を刺した時のような痛みではなく、ほんの少し「チクッ」と感じる程度ですのでご安心ください。
鍼灸師は、治療時に最新の注意を払いながら、患部やツボに鍼を刺入します。
しかし、たまたま鍼が毛穴を刺してしまった時や、あるいは毛を巻き込んで刺さってしまった時は、些細な痛みを感じる場合があります。
鍼を皮膚下の必要な深さまで刺し進めるとき、人によって感じる痛みが異なります。
鍼灸治療においては「ひびき」と呼ばれる感覚で、からだが温まってきて心地がよいと感じられますが、慣れないうちはからだが強張り、それを「痛み」と感じる方もいます。
鍼を刺入し、低周波の電流を一定のペースで流し続ける治療があります。これは経穴(ツボ)や筋肉のより深い箇所まで刺激を与えて効果を促す施術方法です。
しかし慣れないうちは痺れるような感覚が伴い、痛みを感じる場合があります。
ようやく鍼灸施術を受けようと鍼灸院を訪れても、視診(鍼灸師が患者の患部を目で見て診察すること)の段階や施術中に、患者自身が気づいていない病気や症状が見つかる場合もあります。
この気づかない病気や症状がある場合は、からだの感覚が敏感になるので鍼の痛みを感じやすくなります。
▼ポイント もし施術中にわずかな痛みを感じた場合は、担当の先生に伝えましょう。鍼の位置や向きを変える、電流をゆるめる、鍼を抜くといった対処をしてもらえます。 もし病気が見つかった場合は、鍼ではなく西洋医学に頼ることが望ましいケースもあるので、少しでも痛いと感じたら我慢しないことが大切です。 |
これらのタイミングでは、鍼が「痛い」と感じる場合がありますが、反対に言えば通常は痛みを伴う治療法ではありません。次章からは、その理由について説明します。
からだに刺すことで治療を行う鍼ですが、痛いと感じない理由は複数あります。
日本で行われている鍼灸は、「管鍼法(かんしんほう)」と呼ばれ、筒状の鍼管(しんかん)の中に鍼を入れ、上から鍼をポンッポンッと優しく叩いて鍼を刺入する方法が一般的です。
実はこの鍼管を使うことで、鍼の痛みをほとんど感じにくくしています。鍼管の上から叩くことで、痛みを感じている暇などないほどあっという間に刺さるので、ほとんどの方は痛みに気がつきません。
東洋医学においては、私たちのからだには「経絡」と呼ばれる、血液・気・水といったエネルギーの通り道が張り巡らされていると考えられています。
そして鍼灸(東洋医学)では、この経絡の流れを良くすることで、心やからだの状態が回復するとされています。
病気の症状に悩んでいる場合、経絡上にあるツボを鍼灸で刺激すれば、血行が改善されてからだが持つ本来のエネルギーの流れを取り戻し、症状がやわらぐという仕組みです。施術されているときは血行が促されているため、からだに鍼を刺しても痛みを感じにくくなります。
鍼を打つと、痛みを感じるのではなく気分がスッキリするという声もあります。これは、鍼がもたらすリラックス効果と考えられます。
いくつか事例をご紹介します。
例えば英国Oxford学会(Oxford Academic)の研究雑誌「Endocrinology(内分泌学)」で発表されたジョージタウン大学の研究では、鍼がツボの正しい箇所に刺入されるとストレスホルモンの伝達が抑制され、ストレスレベルが下がることが報告されています。
つまり、鍼を刺すとストレスレベルが下がり、痛みではなく、リラックス効果が生まれるという訳です。
また米国N.Y.マンハッタンの会員制(年会費$5,000)の高級ウェルネス・クラブ「The Well」では、鍼灸(acupuncture)がヒーリングプログラムとして開催されています。当クラブは 西洋医学の利点と東洋の癒しを融合したウェルネス(心身の健康と幸福)を目的として運営されており、リラクゼーション領域において鍼灸の効果が認められていると伺えるでしょう。
参考:Wellness is an industry, a journey and now a $5,000-a-year club|The Washington Post
日本でも、すでにSPAやエステティックのリラクゼーション領域に鍼灸を取り入れているところがあります。
アマン東京のアマン・スパでは、鍼灸を日本古来の健康法ととらえ、リラクゼーショントリートメントと組わせて施術を行っています。
またフランスの自然派化粧品ブランドYONKAでは、ホリスティックビューティー&ウエルネスプログラムに鍼灸を取り入れ、テーラーメイドなトリートメントでからだも心も調和させてくれるプログラムがあります。
このように鍼が痛いよりも、気持ちいいリラックス効果をもたらすことは、世界中に急速に広がりつつあります。
鍼にリラックス効果があるとわかっても、実際にからだに刺すのはまだ怖い…と感じているなら、「鍼シール」の活用も検討してみましょう。
鍼シールとは、自分で手軽に貼ることができるセルフケア鍼のことです。シールに付いている鍼は短く、鍼先が丸くなっています。長さは1㎜以下と非常に短く、皮膚の痛みを感じる領域まで届きにくくなっています。そのため皮膚に貼ってもほとんど痛みはありません。
それでも鍼に抵抗がある場合は、金属の粒を貼るタイプやプラスチック製のタイプをおすすめします。
最後に、鍼灸に関するよくあるQ&Aにお答えします。
鍼灸院で使われている鍼は、使い捨てが一般的です。一度使うと、体液や血液などがつくため医療用産業廃棄物として処理します。
金や銀の鍼を使う先生の中には、使い捨てではなく、患者ごとにその患者専用の鍼を用意し、医療用高圧滅菌機(病院でも使用されているもの)で滅菌し、使用する場合もあります。
患部に鍼を刺すときは、ほとんど痛みを感じません。
しかし刺入された鍼が、同時に皮膚の内部で患部にわずかな傷をつけています。
そのため全く痛みを感じてないのに、鍼先で血管を傷つけた場合は、内出血が起こる可能性があります。
内出血した場合は、すぐに担当の先生が対処してくれます。対処法としては、アルコール綿花で内出血した部位を上から1~2分強圧迫しましょう。
予防接種なので注射針を抜いたときに看護師から「強くおさえてください」と言われるときと同じやり方です。
もし青くあざになった場合は、数日で皮膚内部に血液が吸収されます。青あざも1週間程度でなくなりますので、ご安心ください。
次の病気については、鍼灸施術を健康保険で受けられる場合もあります。
ただし健康保険で上記の病気の鍼灸施術を受ける場合は、医師の同意(医師の同意書)が必要になります。
詳細や最新情報は、必ず各医療機関に直接ご確認ください。
鍼灸院では適切な施術を行うために、急に鍼を刺すのではなく、必ずヒアリング(問診)が行われます。そのヒアリングに基づいて、その方に合うオーダーメイド施術を行います。
もし施術中、痛みが強いと感じたら、担当の先生に伝えれば調整してもらえますので、痛みや腫れの心配はほとんどありません。
自分が鍼灸施術する目的に合わせて、ホームページや口コミなどから、そこの鍼灸院が得意とする施術領域を見て選ぶようにしましょう。
患部や症状によっては、鍼灸院に数回から数十回通わなければいけない場合があります。できれば、家のまわりや職場の近くなど通いやすい場所にある鍼灸院を選んでください。
今回は、鍼灸の鍼は細く繊細で痛みを感じにくいことや、鍼が毛穴に入ると些細な痛みが少しあること、鍼には血行促進や世界的にも認められているリラックス効果もあることなどをご紹介しました。
これでもう、「鍼が痛いかも」といった恐怖よりも、「鍼は気持ちいいかも」という期待が増してきたのではと思います。
もし本記事をお読みいただいて、まだ鍼が不安に感じる場合は鍼シールから、気持ちいいを体験してみたい思ってくださった場合は、ぜひ鍼灸院を訪れてみてください。
このコラムの監修者
藤吉徳孝
(公社)日本鍼灸師会
(公社)全日本鍼灸学会・(一社)日本小児はり学会・日本伝統鍼灸学会
はり師・きゅう師
現在、(一社)岐阜県鍼灸師会会長、はりきゅう安寿堂院長。